著者らの主張には納得できなかった。この本でたくさんの学者の先生方の意見を読むことが出来、勉強にはなった。読んで良かった。しかし、意見は意見でしなかない。事実かどうかはまた別の話。私の意見としては、著者らの唱えるアーキテクチャ理論は日本製造業の凋落に対する分析として、本質をついていないと考える。
「モジュール型・インテグラル型」という区分けは納得できるし、分析としてアリかとは思う。しかし、本書に述べられている「機能性化学品業界では工程アーキテクチャがすり合わせ型だから日本企業が強い」という主張を読んで、強い違和感を持った。化学品についていえば、単工程でも調整や装置選定が難しければ先発の日本企業が強い。わざわざ「すり合わせ」という言葉を使って我田引水の議論をするのは、学者として「人と違うことを言いたい」というプライドがあるからなのだろう。
そう考えると、著者らの主張するアーキテクチャ論全体も、もっと単純化出来ると思った。つまり「技術的に作り難いモノ」は、まだまだ先発日本企業が強いが、「作りやすくなってきたモノ」は国際競争の波にもまれ、「日本企業だけが勝てる確率」は減る。
要は、「経営力が強い企業や国家が勝ち、弱い企業や国家が負ける」という単純な競争の問題かと思う。アーキテクチャ理論はひとつの分析結果として参考にしておき、本質的には日本企業や日本国の「経営力」、つまり「商売上手になる能力」を高める努力を最優先で行う必要があると考える。その為に最も必要なものは経営者の質を高める為の教育と、国を挙げての産業競争力育成(保護ではなく)ではないだろうか?
・・・追記すると、本書の中で「これは明白である」とか「この例は・・・を意味している」などと断定している箇所のうち、半分ぐらいは納得できなかった。「まず主張ありき」の強引な論理展開が多数見られる。クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」等の誠実な研究と比較してしまうと、その差は歴然である。
「藤本学派」は日本の製造業の再生に役つのか?それともミスリードしているのか?疑問が残る。