この本は、題名こそ「ものぐさ自転車の悦楽」(折りたたみ自転車で始める新しき日々)と大人しく、いま流行のロードバイクではない、折りたたみ自転車(フォールディングバイク)が使われているが、内容は著者自身が10数年前に自転車生活を再開してから得た、多くのノウハウが惜しみなく披露されており、自転車伝道師から自転車ワールドニューカマーへの熱いメッセージとなっている。
具体的には、著者が最近その潜在力に大いに目覚めたという折りたたみ自転車を使い、乗り方や法規等のソフト面はもちろん、自転車の種類や構造等のハード面についても詳しく述べられている。
そして、それにも増してこの本が感動的なのは、日常的に自転車に乗っていなければ決してもつことのないであろう視点がいくつも提示されていることである。「私は自転車によって、少年時代の感覚を確実に取り戻した。そして、自転車によって初めてこの街が、自分の街になった」、「どこに何があってそれが何なのか、お前はまだ何も知らない、ということを自転車は教えてくれるかのようだ(脚注より)」、「人の目には、必ず万が一の見落としがあるのだ」、「見知らぬ遠い街まで行って、すぐに地元の人になることができる」など、自転車乗りの感覚の真髄を随所に読み取ることができる。
題名からの印象とは違い、著者疋田氏のこれまでの自転車人生の集大成といった趣すら感じられる本である。と同時に、この本を読んで改めて「自転車は奥の深い乗り物だ」という感を強くした。実は、この本との出会いの1月後にはBD-1を購入し、近所への買い物用や短距離の輪行用として乗り回しております。