朝日新聞日曜版に読書歴を中心とした筒井康隆の自伝が連載されている。その中で絶賛されていたのが川端康成の短編「片腕」だ。本書はその作品を含む、15の短編が収められている。
その川端康成の作品は筒井康隆を驚かせただけあって、すごく異様だ。不気味で、あり得ない設定でありながら、エロチックでどきどきする。ノーベル文学賞に輝く日本情緒を代表する作品で有名な作家に、こんな異質な作品があったとは驚いた。
錚々たるメンバーの作品と作品の間は安西水丸のイラストで飾られる。通常の挿し絵だと作品ごとに1点のイメージが掲載されている場合が多いが、この短編集では作品の終わりに複数のイラストが収録されていて、これが作品に余韻を与えている。イラストを中心に、そこから発想した短編集という見方も可能かもしれない。
水丸氏のイラストといえば村上春樹作品とのつながりも強いので、本書は村上ファンにも気に入られるかもしれない。なかなか周到な作りの本だと思う。