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もてない男―恋愛論を超えて (ちくま新書)
 
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もてない男―恋愛論を超えて (ちくま新書) [新書]

小谷野 敦
5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (33件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

メタローグ

万国のもてない男よ団結せよ。今、時は来た。宮台真司の如きもてまくり男や、セックスしなきゃ現代思想の深さはわからないなどと書き腐る上野千鶴子の時代は去り、我らもてない男の怨念をはらす時は近い。信じよ、信じるものは不幸なままだが。見よ! 我らがバイブルはここに降ろされた。童貞の苦しみ・不安から、もてない男の嫉妬や孤独、さらに〈おかず〉やオナニー道具の歴史から「恋愛不要論」の連戦連敗ぶりまで、今までアカデミズムとやらが省みようともしなかった我らの情念のすべてがここにはある。小谷野教祖を信じていれば我らに一切の迷いなし! ああ、書いていてなんだかとっても虚しいのはなぜ。(守屋淳)
『ことし読む本いち押しガイド2000』 Copyright メタローグ. All rights reserved.

内容(「BOOK」データベースより)

歌謡曲やトレンディドラマは、恋愛するのは当たり前のように騒ぎ立て、町には手を絡めた恋人たちが闊歩する。こういう時代に「もてない」ということは恥ずべきことなのだろうか?本書では「もてない男」の視点から、文学作品や漫画の言説を手がかりに、童貞喪失、嫉妬、強姦、夫婦のあり方に至るまでをみつめなおす。これまでの恋愛論がたどり着けなかった新境地を見事に展開した渾身の一冊。

登録情報

  • 新書: 199ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (1999/01)
  • ISBN-10: 4480057862
  • ISBN-13: 978-4480057860
  • 発売日: 1999/01
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (33件のカスタマーレビュー)
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形式:新書
ある意味で小谷野氏の人生を救った快著いや怪著である。「もてない男」とは、あくまで自分(小谷野氏)が惚れた相手に思いを通じさせる男のことであって、地上に存在するあらゆる女性から全く相手にされない男(箸にも棒にもかからない男)という意味ではないそうだ。小谷野氏自身、この本を書くまで大学生活含め「まったくもてなかった」そうだが、かといって全く女性にご縁が無かったわけではなく、こっちは全く興味はないが向こうは当方(小谷野氏)に興味があるという状況はそれなりにあったそうだ。

それにしても、よくもまあこんな本を書いたものである。これは小谷野氏版「ウィタセクスアリス」とでもいおうか。小学校の頃、棒登りをすると股間が妙に気持ちよいので何度も登ったという告白にはじまり、童貞だった大学(院)生の頃、深夜いそいそとレンタルヴィデオ屋に向かい堪能するようにアダルトヴィデオのパッケージを眺めたとか、10年もアダルトヴィデオでオナニーしていると飽きてくるとか、よくもまあこんなこと活字にしたなあという記述がこれでもか、これでもかと出てくる。

なかでも最高なのが「ああ、妬ましい。悔しい。どいつもこいつもいちゃいちゃしやがって。爆弾でも投げてやろうか。なんで俺ばっかりこんなに孤独なんだ。だいたい俺は東大出ているんだぞ。こんなに女にもてなくて振られてばっかりいるんなら、なんで苦労してあんなに勉強したんだ。あいつら、頭はからっぽのくせしやがって。少おしばっかり背が高くてしゃっ面がいいだけで、下手すっと日本がアメリカと戦争したことも知らねえで、アメリカの首都はニューヨークだと思ってんじゃねえか」(104ページ)。なんでも著者は本書を「義憤」ではなく「私怨」で書いているんだそうだが、いやはやなんとも。

これだけあけすけにプライバシーの切り売りをして内面をぶちまけている小谷野氏だが、読後嫌悪感より爽快感が残るのは、氏が基本的に真面目で純粋で女性に対して真剣だからだろう。要するに憎めないのだ。小谷野氏は売買春をきっぱりと拒絶している。プロの売春婦相手に性欲を処理するのは不潔で虚しく、やはり異性との精神的結びつきを経て肉体的結合に至るのが重要なんだと繰り返し述べている。このあたりが彼が好感をかもし出す所以ではないか(ただ東南アジア、モスクワ、東欧なんかでは、江戸時代の遊郭よろしく半分素人相手の擬似恋愛みたいな売買春もあるとも聞くんだけどなあ)。

「女は押しの一手だ」とか「強姦された女は強姦した男を好きになる」などという話は大嘘だというのはその通りだろう。「ラブレター」にまつわる神話もその通りで、興味も関心もない男からラブレターをもらった平均的な女性の感想は「気が重い」「どうして処理していいかわからない」「気持ち悪い」といったもので、およそ「文章の力で女性を振り向かせる」なんてことは不可能のようだ。自分の文章力に抜群の自信を持っていた立花隆は「千通のラブレターを書いて、あの女性を振り向かせて見せる」と宣言して実践し、自爆轟沈している(笑。

山口昌男、筒井康隆らが1975年に某女子大大学院日本文学課修士課程卒業生のお別れコンパで起きた教授による女子学生強姦事件において強姦犯の教授を弁護し、教授を訴えた女子学生に罵詈讒謗を浴びせているという話も俄かには信じられない話だ。特に山口は女子学生を強姦した二人の大学教授を弁護しようと「強姦という文学的行為をしてくれた人物(大学教授)への憎しみから、告訴という破壊行為に走るようでは、大学院で文学をやる価値など全く無い」「憎しみだけで二教授の文学的業績を葬ろうというのは。。。最低だし、そもそも二教授の文学的業績を認めていなかったことになり、やっぱり大学院での勉学は無駄だったのだ」などと放言し、その勢いで「満26歳、数え年で27か28のオールドミスの貞操が、二教授の社会的生命及び学問的業績及びその家族の生活をおびやかすほど価値があるものなのかどうか」(いずれも月刊「太陽」平凡社1975年9月号掲載記事で、同じものが「知の遠近法」岩波現代文庫にも収録されている)などと書くに至っては、全くの噴飯モノである。正気か?山口昌男!今なら、即、大学教授解任なんだけどなあ。惜しい!

もっともその同じ筒井康隆が医者から禁酒禁煙を指導された際、同席していた奥さんの前で「わたくしは何を楽しみに生きたらいいんですか」と叫び、奥さんから「私がいるじゃない」とたしなめられたりしている。こういう「ちょっといい話」がこの本の救いなのではないか。

自分はちゃっかり結婚しておきながら「非婚のすすめ」などという本を書くデブの売文業者森永卓郎を「大馬鹿野郎」と一刀両断するあたりは小谷野節の真骨頂である。

まあ、小谷野氏の気持ちは分かる。私は彼とほぼ同世代で、私たちが大学生だった頃は、あの軽佻浮薄な山田吾郎あたりが仕掛けた「ホットドッグプレス」なんかが全盛を極めた時期で、要するに大学生になった以上、彼女がいて当たり前で、クリスマスは二人でホテルで迎えようなんて、ほんとにそんなことやっていた奴が何人いたのかという企画が世の中を席巻していた時期だ。こういう無責任な連中が無責任に世間を煽った結果、小谷野氏のような「良心的な人」が非常に苦しめられたというわけだ。全く、軽佻浮薄な連中が商売のために男女関係だのセックスだのを商品化して煽るというのは、まことに無責任で有害な行為である。それにだ。大学時代同衾した「彼女」がいたとしよう。そのままゴールインすればよいが、かなりの確率で分かれたりする。そうなると双方かなり心に傷を負ったりする。見事20歳そこそこでゴールインしても、その後、飽きてきて分かれたりすることもある。だんだん相手の短所が鼻についてきて我慢できなくなることもある。男女関係は真に複雑怪奇なものだ。男女関係は帝国主義に似ている。小谷野氏は「植民地が欲しい」ともがいていた日本やドイツみたいなもので、彼の主張は「持てる国と持たざる国」の不平等を説いた「英米本位の平和主義を排す」に通じるものがある。しかし、実際に膨大な植民地を持った国々はその後莫大なコスト負担にあえぎ、最後はフランスのアルジェリア戦争のように大きな犠牲を強いられて撤退を余儀なくされた。妾だの愛人だのは、恐ろしいまでの所得分配の不平等が存在する社会で初めて可能となる話しであって、今の日本のように世界でも有数の超平等社会では、こうした逸脱はほとんど不可能なのである。その意味で小谷野氏は極めて小市民的で健全な存在である(だって悶々としたのは小谷野氏ひとりであって、誰も傷つけていないでしょう)。

それにしても同世代なのだから、「おかず」として宇野鴻一郎の一連の小説や漫画では芳谷圭児「高校生無頼控」「カニバケツ」「学校の探偵」や叶精作「実験人形ダミーオスカー」が出てこないのはどうしたわけか。なんか理由でもあるのか。
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形式:新書
この本が売れてから自慰とか童貞をテーマにした著作がいろいろ出たけど、たいがいはゴミのような駄本ばかり。真面目なアカデミズムの研究者が奇をてらったつもりでこういうテーマに手を出すんだろうけど、内容は「いろいろ調べました。えらいでしょう!」て感じの似たようなものばかり。つまり、いろいろ調べてみたあげく、著者にとって調べた内容がどういう意味を持ちそこからどのような提言ができるのか、っていう考察に欠けるわけ。

だが『もてない男』は、全然ちがう。

小谷野氏の、かつてもてなかったことに対する「恨み節」が、異様な迫力をもって伝わってくる。なぜなら、もし現代日本のほとんどの男性が「恋愛教」に侵されているのなら、その誰もが「もてない男」である恐怖からは決して逃れられないからである。恋愛を至高の価値として認識する限り、人はそんな強迫観念に常に付きまとわれる。その袋小路から逃れようとする小谷野氏の苦闘が、時にほほえましく時に手前勝手な屁理屈に思うこともあるが、そんなことはこの本のすばらしさからすれば大した問題ではない。

ところで小谷野氏の著書の内容って、驚きでガツンと頭をぶん殴られたような知的衝撃を受けるときと、あまりの手前勝手な議論に腹が立って著者の頭をぶん殴りたくなるようなときが交互に訪れるような気がする。そんな意味でいえば、この本は「殴られ率」が非常に高かったので、ところどころで著者の頭をぶん殴りたくなるような手前勝手な表現に出くわしても、なぜか「まあいいや」と許してしまったのだ。逆に、そのとき著者の本音が垣間見えたようでほほえましく思えてしまった。それは、不覚にも小谷野氏に「愛」を感じてしまった瞬間だったのか!?

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18 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:新書
評論家や、文壇チキン喧嘩士、Amazonレビュワー、東大至上主義者、最後の喫煙主義者としてそこそこ有名な著者の豊富な知識を活かし明治〜昭和の文学作品などをあたり、モテない男(とくに童貞)についての繊細で変態なあれこれや、恋愛至上主義なんてクソくらえだという毒舌が満載の、知的童貞本。雑学としておもしろかったり、著者の偏屈者のキャラクターがにじみ出ていておもしろいので5点満点をつけたいところだが、こんな本書いておきながら結婚してノロけたりしてしまったので-5点。結婚後、あまり幸せになったわけじゃなさそうじゃないので+2点。
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