ホルモンヌなどという愚かな造語も生み出した一時のホルモンブームもようやく下火になって来た。かつてのモツ鍋ブームと同様、雨後の筍のごとく続々と街場に誕生して幅を利かせていた一過性のチェーン店もそろそろ看板を掛け替える時期が来たようだ。
本書もおそらく当初はブームに便乗して企画されたものであろうが、些か出版時期を見誤った感は否めない。しかし、真のモツ好きは端からブームなど無関係だ。むしろ生活の一部。当然、行きつけの店も決まっている。「ホルモンヌ?死ね」そんな諸兄にとって本書は確実に手応えのある内容となっている。
紹介されている店は基本的に都心がメイン。モツ好きなら大半は知っている店ばかりだが、オールカラーの多彩なモツ写真が食欲をそそり、思わずホッピーを飲んでいる自分を妄想してしまう。すでに行ったことのある店もエア・ギターならぬエア・モツ(追体験)が可能で、それだけでも本書を手に取る価値があると言えよう。
監修はネットでも「居酒屋礼賛」という有名なブログをやっておられる浜田信郎氏。東京居酒屋ガイドの名編「東京居酒屋名店三昧」(共著)など実績も豊富な筋金入りのドランカーだが、唯一難を言えば、実に攻撃的なタイトルとは裏腹に内容(文章)が至って大人で、今一つ「読み物」としての面白みに欠ける点か。浜田氏の温和な人柄がそのまま出ていると思えば、それはそれで良いのだが。
それとあとがきにも書かれている通り、大関、横綱級の名店が「取材拒否」などの理由で取り上げられていないのも非常に残念である。このため本書は完成度という点に於いて「モツの集大成」というレベルにはまだまだ達していない。
それでもこのような意欲的な本を出そうと改めて一から自分の足で取材し続けた浜田氏の情熱には脱帽する。単なる雑誌の特集記事ではない、酒に溺れた男の人生がモツ焼きの煙みたいに染みついた一編だ。