広重好き、浮世絵好きの方にはオススメできる1冊です。特にこれから歌川広重の作品をじっくりと眺め、その生涯をたどろうという方には最適でしょう。
著者の内藤正人氏は慶應義塾大学准教授で、浮世絵・琳派を専門とする博士(美学)を持つ専門家です。本書は、浮世絵の初心者向けに書かれており、読みやすい解説でありながら含蓄に富んだ内容も多々含んでおり、何回も広重の作品に触れてきた方にも納得するものだと思います。
見開きで掲載されている東海道五拾三次之内「箱根湖水図」の迫力に驚かされます。たまたま先日も某美術館で広重を10数点鑑賞してきた中にこれもありましたので、その色合いもよく再現できています。「蒲原 夜之雪」での天ボカシの初擦と後擦での地平側のボカシという変化は初めて知りました。なるほど、と感心した次第です。
昨年夏、東京芸術大学美術館で120点あまりの『名所江戸百景』の全作品を鑑賞しましたので、終焉で書かれている「いまだ見ぬ景色をもとめて」での『名所江戸百景』に関する解説も興味深く読みました。それらの一連の作品から広重の画家としての才能と、万人を魅了する特異性と芸術性が感じられました。
「亀戸梅屋敷」「大はしあたけの夕立」の作品をゴッホが模写したことによってより有名になりましたが、どちらも見事な作品です。「深川洲崎十万坪」の大胆な構図などは、広重の面目躍如といった作品ですし、「両国花火」「猿わか町よるの景」「浅草金龍山」にもあらためて魅了されました。
日本の生んだ偉大な絵師、広重の作品を実際に鑑賞する際の手引書として最適だと思います。サイズはA4ですから大きく、比較的廉価でありながら、しっかりとした編集がなされています。