おいたち・少年時代に始まり、青年期の作品を掲載しながら、偉大な画家の歩みを辿れるようになっています。画風の確立の過程ではいろいろなものを吸収しながらオーラを増していったわけで、その歩みもまた興味深いものがありました。
著名でありかつ親しみをもって愛でられた偉大な国民的画家であることには間違いありません。音のない世界を描きながら、自然界の空気や温度まで感じ取れるような深い作品を生み出し続けた巨匠の凄みに触れることができました。
「冬華」での霧氷の木と霧を通して鈍く白く輝く太陽から、精神性の深さを感じ取りました。風景をそのまま描くのではなく、心象風景として単純化しながら、モティーフを鮮明に浮かび上がらせるもので、見る者の心を深く捉えています。
「花明り」では、円山の桜と満月の対比が素晴らしい空間を形作っており、精神性の深さを感じ取りました。妖艶な桜はこの世のものとは思えないほどの艶やかさを披露しています。
「年暮る」の京都の町並みに降りしきる雪の景色は素晴らしいものがありました。静寂の中に往く年を惜しむ気持が込められています。その作品が多くの方に愛されるのは、シンプルでありながら明確なメッセージが込められているからでしょう。
66ページの唐招提寺御影堂の障壁画は、青の世界、墨の世界と称えられた美しいもので、その大きな広がりをもつ全体像をしっかりと理解できるようになっています。巨匠の名に相応しい襖絵で、見る者を圧倒する壮大な景観が描かれていました。
東山魁夷の生涯を分かりやすく知るには好都合の内容ですし、押さえておくべき作品は網羅されていますので、おススメできる画集でしょう。もっと知りたいシリーズですから、そのあたりの確かさは保証されています。