群論(対称性)を中心に据えて、数学および物理学の歴史を語る試みの本です。本書は「美は真なり、真は美なり」という言葉の引用から始まります。本書では「何が美しいか」というと「対称性があるものが美しい」という訳です。そのような対称性があるモノを扱う学問が「群論」なのですが、群論がどのように生まれ、どのように「役に立つ」理論として認知されていったかについて説明されます。
「なぜ5次方程式の解の公式は存在しないのか」という問いから群論が築かれる訳ですが、この経緯を人物伝(逸話)に触れつつ詳説しています。本書の前半では、その5次方程式に至るまでの数学史(バビロニア時代〜)を振り返っています。そして本書の後半では、群論と物理学との関連(相対論〜量子論〜素粒子論〜超ひも理論における「対称性」という指導原理が果たす役割)について詳説しています。これまでの物理学史が示す処では「真は(対称性の意味で)美なり」は確かです。但し、その逆「美は真なり」かどうかは、物理屋と数学屋で見解が分かれる処でしょう。超ひも理論と八元数との関わりについて「美は真か?」が試されているのは面白い処です。
本書で「群論とは何か」を100%理解できるわけではないですが、学ぶ動機づけにはなるかもしれません。難しい数式は殆ど出てきませんが、数式を使わないために却って難しく感じられる部分もありました。物理屋としては「対称性と保存則」の切っても切れぬ関係について更に深く突っ込んで欲しかった処です。(ネーター女史はチラッと出てくるだけで物足りない...) また、一部エピソードが違う処も気付きましたので注意は必要です。("ディラック効果"→"パウリ効果"の誤りでは?、ハイゼンベルグの博士論文は流体力学についてであって量子論ではないことの指摘が抜けてる、等)
なお「
代数に惹かれた数学者たち」「
対称性」も併読すると面白いでしょう。