アジア人初のノーベル(文学)賞受賞作家タゴールの短編集。詩集の“ギタンジャリ”以外はほとんど邦訳が手に入りにくい作家なので、その意味で貴重です。内容は平易で、小学生からすすめられ、10編の短編は、それぞれ15分もあれば読むことが出来ます。世界的に読まれている”カブリワラ“が”カブールの人“の表題で収録されています。出典は3つの短編集から集めたもので、“もっとほんとうのこと“というオリジナルの短編集はなく、一つの短編の題名です。訳者あとがきによれば、この作品はもともと”妖精“と”もっとほんとうのこと“の二つの短編を訳者の判断でまとめたものとのことで、オリジナルが読みたいという人には、この作品に限っては向かないかもしれません。”ギタンジャリ“のような崇高かつ神聖で深みのある内容ではなく、もっと現実に即した風刺のきいた作品で、それぞれの作品のメッセージは、読者各々に考えさせるような体裁で、軽い気持ちで読めます。厳しい結末のものが多く、こころ暖まるというよりは、現代人の人生観に批判を与えるものです。特別にヒンズー教の神は登場しませんので、無宗教の人にも他宗教の人でも抵抗なく読めます。タゴールの”ギタンジャリ“にみられる深い宗教・哲学・人生観を期待する人には、やや期待はずれかもしれません。