この「翻訳」を何と呼ぶべきなのか。
原著の文章を自在に圧縮・捨象して、自分のことばでめちゃくちゃにして書きまくる。
表紙にはアメリカでだれでも知っている著名な社会活動家・コラムニスト・講演家の小さな名前。
翻訳者のでかい名前。
そこで訳本の中身はどうなっているかというと、まず最初に「訳者のことば」というところがあって、そこで「脳を活かせば、もっと「シンプルに」生きられるゾ」という、お得意の言い回しの繰り返しがあります。
「脳を使って勉強しよう」とか、「脳を使ってうまく生活しよう」とか。こんなの、アッソ でおわりだろ。
次からが、本論です。
★ マーシシャイモフの原著は、心の中のトレーニング(「瞑想」トレーニングなど)を勧めていて、一種の民間療法本であるともいえます。
はっきりと「幸福」追求本だと書いてありますし、日本風にいえば「スピリチュアル系」のいやし本。
中産階級的な美人ともいえない素人のおばさんだったひとが、一生懸命書いている。
アメリカでは人気者です。全米かけ回って講演とかしている。
巻末にはたくさんの参考にした他著(学術書)が上げてある。
◆ 茂木先生のおっしゃってる「脳科学」とか、直接の関係がありますか?
出版社も売りたいのはわかりますが、ちょっと営業が過ぎているのでは?
♪♪ ちょっと強引だったですかあ〜 ♪♪ (西田敏行さんの宝くじサマーじゃんぼの節回しで)
◆ シャイモフ女史が、ライセンスのある精神科医であれば、医療として精神面の診療活動ができる。
しかし、女史は、ふつうの高学歴のおばさん。
そこで、ヒーリングについて講演なんかをやってる。人気者になっています。
日常「はっぴい」になるにはどうしたらいいのか。
その心の持ち方をどうすべきかを、たくさんの実話から説き起こす。これが原著書です。
原著は、「純粋の幸せをもとめる7つの秘訣」とでもいうべきタイトルのもとに、何冊かに分かれたエピソード集。
そして、こうしたらいいのではとアドバイスをする。
これが身の上相談みたいで受けるわけですが、通俗ものではなく、ものすごい量の読書とリサーチがなされています。
原著者は、300冊近くを調べたとも言っています。
◆ 原著とこの本を比較すると、この本は、おそるべき「意訳」であると評価できます。
もっといえば、原著とは何の関係もない。
立ち読みでも十分すぎるぐらいでしょう。
(ご参考)
本書は、つぎのような構成です。簡潔な抜書きみたいになっています。つまり原著を徹底的に省略してできた本。
こういうのって「翻訳」なんでしょうか?
アメリカの通俗有名人である原著者の名前を借りた、ハウツー本にしてあると考えられます。
(目次)
脳は「一番あなたらしい生き方」を求めている … まあそりゃそうですよね
→過去でも未来でもなく「今この瞬間」目を向ける … まあそりゃそうですよね
→脳も身体もすごいエネルギーが行き渡る … サイエントロジー(原理)じゃないだろな?
→全身を「思いやり」で満たそうすると、いいことばかり起こる … まさかあ
→人と「心の奥底から」通じ合う … アッソ デ?
→「いいこと」「楽しいこと」でコレクション … コレクション?
→「つながり」があなたを“最高の充実感”に導く … アッソ デ?
原著(CD版もあります)には、人生の成功によって幸福度を決めるのではなく、幸福そのものを追求するのがよいという考えのもとに、たとえば、メタボからのダイエットとか、事業の成功とか、出世とかが、非常に多くの逸話をもとに書かれているところがメーンの読ませどころです。なお、かなりの数の研究書が、巻末にリストアップされています。
ところが、この翻訳(?)書を出している茂木先生によると、「今の自分を愛し受け入れるかどうか」がポイントであるらしい。
このような紹介では、原著を正確に紹介していない。
茂木先生の主観そのものというべきか、ものすごい超訳? いやむしろ「でっちあげ」では?
訳者の主観は、翻訳の最後に書くべきではないですか?
なぜなら、原著には、最初に原著者の考えをはっきり述べた章があるからです。それが台無しになります。
読者はバカだから、原著までは読まないサ、という思い込みがあるのでしょうか?
なんでも訳者がいいようにしている感が否めません。
原著は一冊1000円で買えます。ぎっしり書いてあります。
原著は、アメリカの普通の社会生活(テレビとか新聞でよく知られている話題)の前提からスタートしているところが多く、白人の中産階級的な常識が基底にある。英語そのものは中学生が高校受験をするときに一生懸命やる程度。きわめて饒舌。やや飽きるかも。
さて、本書によれば、「いいことと楽しいことのコレクション」をすると、脳にいいことになるらしい。
とすれば、訳者にとっては、「税金を納めない」こととは、「いいことと楽しいことのコレクション」なんでしょうね。
もう金儲けだけのためにこのレベルの本を書くのは辞めたほうがいいとおもう。
書けば書くほど読者が飽きる。それに読者ってそんなに愚かではないですよ。