人間が想いを他人に伝えるツールとして、「言葉」だけに依存するのは危険すぎる
けれど、どうしても言葉にして安心させてほしい状況もあるし、「黙ってても伝わるだろうなんて、ただの傲慢だ」って叫びたいときもある
そんなとき
そんなとき、ふいにシュリスペイロフの音楽が聞きたくなる
言葉じゃ足りない、温もりじゃ過剰
コミュニケーションを司る心の水面下で、どうしても、シュリスペイロフの音楽が必要になる瞬間がある
それは、きっととても幸福なことなんだろう
目の前の世界は同じはずなのに
どうしてあなたは寂しそうなんだろ
『トロイメライ』
今日も僕と君とのあいまいな世界で
何をしても それは素晴らしいことになるだろう
『レインマン』
このバンドの世界観を、どこか温かくほのぼのとした心地よさ、と捉えている人は多い
このニューアルバムに関してもそうだ
けれど私は、彼らの音楽性に、どこか「自分と他人との間の絶対に分かりあえない境界線」が垣間見える気がする
上記の二曲は特にそう
例え相手が大切な人であれ、自分が理解しきれない部分には手を出せない
そう歌っているように感じる
けれど、それは残酷なことでも何でもなくて、むしろ一種の優しさなんじゃないかと思ったりもする
言葉では伝えきれない
温もりだけじゃ届かない
そんな対人コミュニケーションのグレーゾーンは、生きていく上で避けては通れないもの
けれどそれは生き物としてある種当然の事で、そのしこりがあるからこそ、人は人を思いやり、慮ることができる
それはつまり
君の全部は分かることができないんだろうな
というやりきれない哀しみも
素朴で飾り気のないメロディと歌声にのせることで、小さな希望に変わっていったりもするということだ
分かりあえなくて、伝えきれなくて、当然
だからこそ、想いを伝えるためだけの「ツール」に力を入れすぎたって仕方がないだろう
私にはシュリスペイロフがそんなふうに歌っているように感じる