特に親しくもないクラスメイト、杉山が死んだ。杉山の私物から主人公の名前を彫り込んだ金属片が見つかる。そして以前杉山から受け取ったものの当時開封しなかった手紙。手紙に出てくる少女もまた死んでいるとのこと。それらがきっかけで主人公は死んだ杉山の死因や周辺について少し調べるようになる。そうしていくうちに、主人公は自身の記憶が曖昧な時期があることに気付く。変な夢を見るようになった主人公の前で事件が起こり――
主人公、淵田悟の一人称視点で淡々と描かれる物語。事件は起きる。誰が犯人なのかも考える。だがこの物語を推理小説と考えて読むのは少し違う。最後まで読めば確かに謎は全部解かれているが、「あーなるほど」と爽快な気持ちになるかはまた別。少なくとも私はあまりそういった気分にならなかった。それをふまえて読んでほしい。
帯に「森ミステリィの異領域――冷たさと静けさの少年小説」とある。主人公の性格がさめていたり、夜や夢のシーンが多かったりするせいか、確かにこの物語にはあまり温度や音が感じられない。だがその雰囲気は決して不快なものではない。