Felix Mendelssohnの姉Fannyは、Felixを凌ぐ才能をもった作曲家・演奏家であったとされるが、時代の制約の中で、その真価を十分に発揮することなく終わった。これは、その彼女の復権に貢献しうる評伝である。
知っていることは全部書きました、という印象がつよい。しかし、論文調ではなく、読みやすく構成されている。Mendelssohnの家系には濃厚な脳卒中の病歴があり、Felixの死因については脳出血、あるいはくも膜下出血であった、と(別の論文で)考察されている。Fannyもまた脳卒中で急死しており、私はこれらの死因をより詳細に分析できないかと思い、印をつけながら読んだ。Fanny自身の人生に興味をもっていたわけでもないのに、抵抗なく読了できたのは、著者の筆力のせいだろう。巻末で著者も言うように、フェミニズムの観点からFannyを時代の犠牲者であるかのように書くこともできたと思うが、バランスのとれた姿勢を終始崩さない点は好ましい。巻末に詳細な家系図・年譜・人名索引がついているのも大変便利である。