レヴィ=ストロースの著作の翻訳者として知っていた川田順造氏、氏の著作を今回はじめて読んだが、非常に面白い内容だった。
本書は21の章に分かれ、「イネとタケの文化を問い直す」から「ヤポネシアの視点へ」まで、著者自身が事例研究の数々によって得た日本、フランス、アフリカ、各地域の道具の作られ方・使われ方・受け継がれ方を観察し、解釈し、相互に比較していく。また、日本、といってみても北海道・北東北、琉球、大和日本といった風に異なる文化伝統があったことに著者は着目し、造船技術の違いを例にして相違を明らかにする。さらに、伝統技術が失われていく現状、伝統文化を保存することの意義及び問題点など、話題としては「モノ」と「ワザ」に関わる事柄を一貫して取り上げながら、議論の重点は多岐にわたって変化しつづけている。
書物として一定のディシプリンが貫かれているわけではないが、つらつらと読んでいけば興味深い一節が多くあるし、議論のボトムラインが身体技法に関わることなので、自分の側に引き寄せて考えることが比較的簡単に出来る。柔らかそうに見えて深い洞察のある1冊。