近代を規定してきた成長概念を問い直し、持続可能な地球社会への提言を続けてきた著者にとって、本書はその仕事の集大成的な意味を持っている。とりわけ興味深いのは、「すでに始まっている未来」として、現在繁栄の頂点にある米国経済を分析している部分だ。そこでは、バブル的に膨張したニューエコノミー企業の経営手法にほころびが見えてきた一方で、コミュニティーと最終消費者にしっかりと根を張った新しい企業が勃興してきているという。この点は、日本経済の今後の方向性を考えるうえでも、示唆を与えてくれる。
最終章では、新たな日本社会の発展モデルのカギとなる、食料、エネルギー、ケアの自給に関し、すでに地域で起きている変化の胎動も紹介されている。まず小さなシステムを手づくりで構築し、やがて社会構造全体を転換していこうという著者の戦略は、一見遠回りのようで、実は着実だ。本書は、幅広い市民層に未来への具体的展望を与えると同時に、企業人、起業をめざす人にとっても参考になるヒントが多数詰まっている。(松田尚之) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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34 人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
私のように経済に疎い人にこそ読んでもらいたい,
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レビュー対象商品: もうひとつの日本は可能だ (文春文庫) (文庫)
「マクロな経済数値をもてあそんで”人間”を見ず、時流に便乗し世の中を見下して。”市場が淘汰する”なんて、どんな怖い言葉を口にしているかわかっているのか」ここ十年ほどの経済をめぐり世にはびこる言説に対しての著者のこの言葉に思わず圧倒されました。まさしく目の前で著者がこぶしを握りしめ怒りに震えるさまがありありと浮かんできます。むろんただの情緒的批判ではありません。事実に基づいて語る著者の論理の根底には常にまっとうな倫理観があるからこそ心に響くのだと思います。 私がこの本を手に取ったのは、たまたま朝のラジオでこの方の言葉を聞き感銘を受けたからですが、恥ずかしながら「経済評論家」と呼ばれるような人で、このような心の伝わる言葉を述べる人がいるのだと初めて知りました。経済を語る人(大企業経営者含む)といえば私の知る限りでは、発言内容は間違いなく「賢い」けれど果たして「正しい」といえるのだろうかと(あるいはそんなこと考える私が甘ちゃんなのかなとも)思ってしまうような人ばかりでした。例えば「今は一人勝ち社会で、常に一番にならねば意味がない、それを肝に銘じて努力をせよ」と語る人はいても、一番以外は平然と切り捨てられ富の寡占化が加速する「一人勝ち社会」そのもののいびつさを説く本書のような言葉は、およそ評論家と呼ばれるような人々の口からはこれまでほとんど聞いたことがありません。 この本を通じてこれまでのアメリカを中心とした経済の流れを知ること自体にも意味があるとは思いますが、少なくとも今の世の中をめぐる経済の動きに疑問を持つためには、必ずしも、フリードマンがどうしたとかこれまでのアメリカ経済がどうであったかとか数々のマクロの数値などの詳細な知識で理論武装をする必要は全くないと思います。 ただ一つ、経済の徹底的なグローバル化による格差拡大や弱者切り捨てが天災のような不可避なものではなく、一握りの勝者の傲慢がもたらすれっきとした人災だという事実さえわかっていれば、「生き残るため」などという言葉に翻弄される必要はないことがわかります。行き過ぎた市場原理主義にNOをつきつけることは、決して努力を放棄した人間の甘えや責任のなすりつけではないのだという確信が持てます。別の選択肢、別の世の中の仕組みがありえるからです。本書のタイトルにある「もうひとつの日本」がありえるからです。本書一冊で知ることの出来る情報はたかがしれていますが、より深く知ろうとする入り口として十分本書の意味はあります。 経済の知識は、一部のエリートが他人を出し抜いたり他人の無知を責めたり見下すためのツールではありません。だからこそこの本はむしろ経済などあまり興味がなくても今の世の中の流れに違和感を持つ多くの人に手にとってもらいたいと思います。
23 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
タイトルとちょっとズレ,
By mildwoods (福島県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: もうひとつの日本は可能だ (単行本)
「グローバリズム」「マネー資本主義」「アメリカ依存主義」「市場一元主義」「ご破算主義」「徒労の経済」「一喜一憂主義」これら現代社会の奔流に対し、内橋氏が唱えてきたのは 「多元的経済社会」「理念型経済」「FEC自給自足圏」といった社会概念でした。 本書では、そのような二つの方向性を9.11前後の社会情勢に当てはめて検証し、ごく大雑把に言うならば「アメリカに追随することが、いかにハイリスクで非人間的な社会を招くか」ということを、殆ど怒りにも近い言葉で警鐘を打ち鳴らしています。 「もうひとつの日本は可能だ」というタイトルならば、「どうやって?」という方法論や、従来のシステムの変革によってその影響として予想される問題点といったものへのさらなる洞察と、も!うひとつの「具体的政策」を期待していましたが、好戦的ブッシュへの批判と、その流れに逆らえない小泉政権への批判に力が入りすぎてしまい、私にとっては若干期待はずれの本となりました。 個人的には、第4章の「新たな発展モデル」の部分をもっと拡大して掘り下げ、NHKで放送された内容以外の事例など、書き下ろしとしての新鮮味がもっと欲しかったと思います。 「共生の大地」(岩波新書)を「5」とすれば、この本も「5」とは言い難いので「4」にしました。内橋氏だから全部「5」でもいいのですが。 随所にこれまでの著作や新聞記事の引用もあって、内容的にはとても豊富です。
22 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
内橋克人の主張を理解するための良書,
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レビュー対象商品: もうひとつの日本は可能だ (文春文庫) (文庫)
人間が中心であって、経済に人間を従わせてはいけない。筆者の主張は痛いほど、今の時代に響きます。新自由主義の元祖、フリードマンのことも、宇沢弘文との対談を引用する形をとって、わかりやすく紹介してます。内橋克人を既に読み込んでいる人には、これまでの著作と同様の主張が展開されていると感じられることでしょう。クローニー資本主義(アジア的縁故資本主義)からは決別しなくてはいけないがその解は新自由主義経済ではない、という彼の主張も、いつも筆者が繰り返して述べるテーマのようです。 ですが、私のように、内橋克人をちゃんと読んだのは本書が初めて、という人間には、内橋哲学の入門書としては最適のように感じました。同じテーマを繰り返し主張する筆者の姿勢がぶれてない所も気に入りました。出版年も2003年ですからその内容は決して古すぎることはありません。 本書では、『読者へ、いまなぜ、「もう一つの日本は可能だ」というのか』という、30ページにわたるプロローグがあります。本書執筆の理由が書かれており、それは同時に筆者の宣戦布告だと感じました。この箇所を読んで、買って良かったとつくづく思いました。 今の経済を巡る日本のあり方を概観したい方にはお薦めですし、多くの方は私同様に勇気をもらえる本であるのではないでしょうか。 もう一つの日本は読者一人一人が考えていくべきであると考えるので、参考程度にかんがえればいいんじゃないでしょうか。本書の価値は、現状分析を平易に誰にでも判るように展開してくれたことであり、そのため星5つ、と判断します。
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