近代を規定してきた成長概念を問い直し、持続可能な地球社会への提言を続けてきた著者にとって、本書はその仕事の集大成的な意味を持っている。とりわけ興味深いのは、「すでに始まっている未来」として、現在繁栄の頂点にある米国経済を分析している部分だ。そこでは、バブル的に膨張したニューエコノミー企業の経営手法にほころびが見えてきた一方で、コミュニティーと最終消費者にしっかりと根を張った新しい企業が勃興してきているという。この点は、日本経済の今後の方向性を考えるうえでも、示唆を与えてくれる。
最終章では、新たな日本社会の発展モデルのカギとなる、食料、エネルギー、ケアの自給に関し、すでに地域で起きている変化の胎動も紹介されている。まず小さなシステムを手づくりで構築し、やがて社会構造全体を転換していこうという著者の戦略は、一見遠回りのようで、実は着実だ。本書は、幅広い市民層に未来への具体的展望を与えると同時に、企業人、起業をめざす人にとっても参考になるヒントが多数詰まっている。(松田尚之)
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本書では、そのような二つの方向性を9.11前後の社会情勢に当てはめて検証し、ごく大雑把に言うならば「アメリカに追随することが、いかにハイリスクで非人間的な社会を招くか」ということを、殆ど怒りにも近い言葉で警鐘を打ち鳴らしています。
「もうひとつの日本は可能だ」というタイトルならば、「どうやって?」という方法論や、従来のシステムの変革によってその影響として予想される問題点といったものへのさらなる洞察と、も!うひとつの「具体的政策」を期待していましたが、好戦的ブッシュへの批判と、その流れに逆らえない小泉政権への批判に力が入りすぎてしまい、私にとっては若干期待はずれの本となりました。
個人的には、第4章の「新たな発展モデル」の部分をもっと拡大して掘り下げ、NHKで放送された内容以外の事例など、書き下ろしとしての新鮮味がもっと欲しかったと思います。
「共生の大地」(岩波新書)を「5」とすれば、この本も「5」とは言い難いので「4」にしました。内橋氏だから全部「5」でもいいのですが。
随所にこれまでの著作や新聞記事の引用もあって、内容的にはとても豊富です。
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