妊娠出産の話題に、福島県立大野病院事件(産婦人科医が逮捕、無罪判決確定)をからめて描いた小説です。当方産婦人科医ですので、興味を持って手にしたのですが、「100人くらいの医療者に取材した」という割には浅い理解で、非常に落胆しました。例えば、大野事件をきっかけに全国で産科閉鎖が相次いだのはその通りですが、筆者は「逮捕されてまで産科をしたくないということだろう」と解釈をしています。そうではありません、産科医療に対する誇りを踏みにじられたからです。高齢妊娠に関する知識、正常分娩に医療介入が必要な割合のデータの使い方も疑問で、助産院の描写に関してはいかにも大衆好みで非現実的です。聡明な読者がミスリードされないことを祈るのみです。こんな状況下でも分娩制限をせずに頑張っている現場の人間としては、心がボキッと折れる内容でした。