山と人を描いた連作短篇のこのシリーズも本書で11冊になったが、ここまで一定のレベルをキープしている。胸にじんとしみる話が、必ずいくつかある。これは、なかなか凄いことだと思う。新刊が出るのを心待ちにする所以(ゆえん)であり、その期待が大きく裏切られたことは、まだない。
人間味にあふれ、泰然自若とした人柄がにじみ出る主人公の島崎三歩(さんぽ)がまず魅力的だが、脇を固めるサブ・キャラたちもいい。本巻では、かっちょいい山女(やまおんな)ぶりが板についてきた椎名(しいな)と、三歩を兄ちゃんと慕うナオタの活躍が光っていた。
「オレの足で・・・」「山がよぶ」「もう!!」「フライドチキンあげる。」「前へ」「友来たる」「忘れモノ」「接点」「冬支度」の全九話。
なかでは、おしまいから二番目の「接点」の話が印象的。「あの時、私が止めていれば、あの人は死なずに済んだ。私のせいだ。」と自分を責める椎名と、「違う違う。ぜんっぜん違う。」と首を振る三歩のやりとりから、ふっきれた顔した椎名が抜群に素敵なラストまで。思わず、目頭が熱くなった。
巻末のおまけコーナー。ラフな下書きによる四つの掌篇のなかでは、トリを飾る「マスター」のとぼけた味に、くすりとしちゃったな。作者の遊び心に、やっほー。