本書はエッセイ集であるが、その内容は商品が世に出るに当たりどういう装いをするべきか、いわば商品のTPOに合わせたオシャレについてであり、それにより「消費者は彼(=商品)をどう見るようになるのか」を時に論理的に、また時に経験的に書き記したものである。(業界関係者への苦言・提言もあるが、それも商品のオシャレにこだわる倫理感から発せられた言葉である)
もっとも語り口は広告のプロ(著者は今日第一線級のコピーライターである)らしく、読者にどう読まれるかを大変意識したものになっており、リキんで見せたと思えばしゅんと治まり、怒って見せるけど決して読者を忘れていなく、苦痛を語って軽妙で、フェティッシュに対象に近付くかと思えば良識人として距離をとる、…とまあ、一言でいえば悪意や敵意や難解さや、その他さまざまな眉をひそめるようなものが生まれないように注意深く書かれているので、読者としては、面白がりながらも抵抗なくさらさらと読み進められることになるだろう。一つ一つのテーマが二・三ページ程度の長さに納められているのもまた読みやすさを高めている。
本書ではあくまで個人の経験から得られたもの(あるいはそれから類推されるもの)しか語らないというスタンスを取りつづけているのけれども、その経験されるものというのが、世間にあまねく流通される商品・広告についてのものとなるだけに、個人の経験とはいっても、読者がそれから思いを巡らすことが出来る事柄は予想以上に広範である。(徒然草を読んだことのある人には相通ずるものが感じられるかも知れない)空論でない現実社会に興味のある人になら誰にでもお勧めしたい良書。