この本は単なる成功物語ではなく、発想法、組織、社長学、日本論という4章で、失敗も織り交ぜて実践のヒントを伝えることに重点が置かれている。事例の使い方がうまく、言いたいことを言わないと結局皆が損をするという「アバリン・マトリックス」や、植物成長理論である「ドベネックの樽」をビジネスに生かすといった考え方は、すぐに使える。
社長学の章は類書が無いと思えるぐらいユニーク。マネジメントできるのは20人、オンとオフの区別はサラリーマン根性、自由でなければ社長たり得ないといった哲学は、起業を志す方には座右の銘となるかもしれない。
最終章では、日本のメディアの力不足、ビジネスを語れないサラリーマン社長など著者の憤りが伝わってくる。役人の泣き所を見抜き、人事権の内閣府への一本化など役人や族議員が悲鳴を上げそうな提案は痛快だ。感性と個の時代の到来を予見する松井社長の魔球はしばらく止まりそうもない。(河野幸吾)
(日経ベンチャー 2003/10/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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松井社長の考え方は、今までの調和を重視した日本の社会のなかではかなり独断的に思う読者も少なくないだろう。しかし、激動の今の世の中で求められているのは、明らかに強いリーダーシップをもつリーダーであることを再認識した。
松井社長の経営能力のゆりかごとなった日本郵船の菊池社長の話には泣けた。「郵船は、非常に国際的、競争的」とこの本にはあるが、同社はその長い歴史、他の弱小運輸会社を踏みつぶして君臨してきたことも事実である(縁者の会社もダンピング競争の末、閉鎖した)。この手の日本の会社は、繊維にせよ銀行にせよ没落していった(いく)わけだが、こういう中興の祖の例もあるのだなあと驚いた。
最近注目のライブドアの堀江社長の3部作といい、この松井社長のものといい、こういう若者が出てきたことは、うれしい。
少し古くなるが、HISの澤田社長あたりがお兄さん役か。
97年末の山一・拓銀の金融不安以来、ニッポン(とりわけサラリーマン環境)は、完全に変わった。
今騒動によるナベツネ氏の引退が象徴的なように、政界も官界も、財界も学会も、いよいよ世代交代である。
ニッポンのリセットを考えさせてくれる好書である。
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