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南の恋人キタザワは優しい。
自分の考えを無理に押し付けたりしないし、
時々は洗い物もやってくれるしごはんも作ってくれる。
もう二人の同居人のマリコ、サトシも南に対して
妙な攻撃性を示さないし、話し掛ければ大体答えてくれる。
でも明らかにおかしい。読んでいるこちらも南以上に
イライラさせられる。しかしながらキタザワのメンドクサイ
という言葉を聞けばそういう価値観の人もいるかと思わず
納得させられそうになる。
現実には恐らくありえない話だが、
自由や責任回避、自分たちだけのルールというものを膨張させれば
このような不思議な人間関係が存在してもおかしいくない気がしてくる。
彼らは自由を叫びすぎているわけでもなく、
責任を回避しすぎているわけでもなく、
人と会話をしないわけでもなく、合間を縫って生きているようにみえる。
少しずつのすれ違いが、取り返しのつかないすれ違いにもみえる。
そんなすれ違いは現実社会をみると10年前以上に色濃くなっている。
この本には小説が二作収録されている。「みどりの月」と「かかとのしたの空」、両方ともうまくいってんだかうまくいってないんだかよく分からない仲の恋人(夫)を持つ女が主人公だ。そして、どちらの主人公も不潔でがさつでヤクにも手を出している変わり者の女に悩まされているという共通点を持つ。しかし主人公はその女が嫌で嫌でたまらないのに、なぜかその女に対する憐憫の情も表している。その微妙な気持ちの表現が上手だと思った。どちらの小説もヤマなしオチなし意味なしという感じはするのだが、主人公の微妙な気持ちを味わいたい人にはお勧めだと思った。
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