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物語には、ハンカチの上で菊の花を咲かせてお酒を造る小人、ライラックの花で帽子を作る帽子屋、細い絹糸でレース編みをする少女、朝つゆのボタンを作る少年と、憑かれたようにものを作る人たちが登場します。主人公だけではなく、脇役も菊屋のおばあさんやえみ子さん、帽子屋のおかみさん、三日月村の黒猫と魅力的です。
そして、安房直子のファンタジーの世界が〈帰ってこられない怖さ〉を漂わせながら広がっていくのです。美しいだけではない、深い人間へのまなざしが作品をより重層的にしていると思います。読み終わった後、ほっとため息をつきながら、自分の心を顧みずにはいられないような・・・余韻が残ります。
郵便屋さんが、美味しいお酒を造るつぼの中の小人たちと出会う話――
「ハンカチの上の花畑」。
帽子屋さんが、不思議なトルコ帽の注文を受けるところから始まる――
「ライラック通りの帽子屋」。
少女のかなちゃんが、美しい模様のレース編みを教わりに、黒い森の
レース学院に行く――「丘の上の小さな家」。
倒産してしまった洋服店の少年のさちおのところに、片目の大きな
黒猫がやってくる――「三日月村の黒猫」。
この第4巻のタイトルにあるように、どの作品も「まよいこんだ異界」に
出かけていった人たちの不思議で、ちょっと恐いような体験が描かれて
います。身近な場所に穴があって、ふと気がついたらその中を下へ下へと、
それとも上へ上へとかな? 落っこちていたみたいな体験を、作中人物たち
がしていくんですね。ひどく危険な目に遭う波瀾万丈の冒険とかいったこと
はないんだけれど、こことは違う別の世界で過ごす誘惑とある危うさのよう
なものが作品に封じ込められている、そんな気がしました。
どの作品も、私はとても面白く一気に読んでしまいました。この中では
分量的に短い「ライラック通りの帽子屋」はやや面白さが落ちるかなと
思いますけど、その他の三つの作品は甲乙付けがたい出来映えでした。
なかでも、「ハンカチの上の花畑」は、話の中に引っ張り込まれるような
面白さと、ぞくぞくするような恐さがあって印象に残ります。
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