独特なイメージの世界を堪能できる作品集。
それは非現実的なるものと現実的なるものが隣り合わせる世界でもある。たとえば、
クリーム色に光る中国野菜と、ジャムパン
切り取られたハムスターのまぶたと、取引停止のクレジットカード
見知らぬ男に見守られ機内にて絶命する老婆と、恋人との喧嘩を気にかけつつ出かける取材旅行
もげた左腕・石の棺のようなプールと、ホットケーキの甘い匂い
現実と非現実。生と死、あるいは眠りと死。これらを隔てるものは薄皮一枚のように頼りなく儚い。そのことが「まぶた」というタイトルによって一層際立っている。
「リンデンバウム通りの双子」という一篇は、著者の近著『物語の役割』にて創作過程が明かされている(採用されなかったもうひとつの結末も)。合わせて読むと興味深いので、ご一読をおすすめしたい。
解説は堀江敏幸氏(堀江氏の著書『本の音』所収の一文に手を加えたもの)。