本書は14、15世紀から19世紀初めの西洋絵画を対象に、神話画、宗教画、風景画、静物画など主題別に12章からなり、各章は代表的作品の分析、ジャンル全体に対するポイント、「絵画の表現形式や受容のされ方に関する重要な視点」と明確に構成されている。章末の文献案内は読者の興味をさらに広げ、各章のトビラに記された簡単な概略と注目点は、レッスンへの心構えを整える心憎い配慮である。
文章は、実際の講義に参加している気分になる口語体だが、絵画から受ける感動を的確な言葉で表現してくれる筆力は心地よさすら感じさせる。「絵を見る面白さ」を伝えようという著者の思いは全編を貫き、読後は美術館へ出かけて実物の絵と向き合いたくなるだろう。(林 ゆき)
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絵画の楽しみ方は無数である。しかし神話画・宗教画・寓意画などは、西洋の神話や聖書などの知識を背景として描かれており、また時代的地理的条件が及ぼす影響も大きいため、まずそれらに関する知識を得ることが、鑑賞の第一歩となる。
著者は、無知・無防備な状態で絵画を恣意的に見ることの不自由さと、知識におぼれることの危険さの双方を充分に理解した上で、「見ること」の意識化と訓練の重要性を説く。「まなざしのレッスン」というタイトルはここからきている。
予備知識のない学生を想定しているだけあって、初心者にも非常にとっつきやすい内容。難点は、絵画の写真がモノクロで小さめであることか。口絵カラーでも何点か紹介されてはいるのだが、講義では他の絵にも多数言及しているので、見づらくて困ってしまう。私はネット上の画像や手元の画集で各作品の色などを確認しながら読み進めていった。
しかし説明そのものは大変わかりやすく、「ややもの足りない」という人には各章末の「文献案内」で他文献への手引きも行ってくれている。
ルーベンス『パリスの審判』で、ヘラ・アテナ・ヴィーナス(3人とも全裸)を見分けるには? ボッティチェリ『春』で、ヴィーナスの左右にいる男女は誰なのか? など、美術館で有名な絵を「ただ眺めるだけ」から一歩進みたい人に、初めの1冊として適した書であるだろう。
でも、この本を読んで見方ががらりと変わりました。例えばダヴィンチの有名な「受胎告知」。キリスト教徒で聖書をよく読みこんでいる人や、他の画家の「受胎告知」をポイントをおさえて鑑賞してきた人がこの絵を見たら、一般の人とは全く違った見方ができるのだろうな、ということがよくわかりました。画家の生い立ちだとか技術だとかいう細かいこととは別の、絵画で見なければならないポイント、知っておくべき知識をわかりやすく伝えてくれる良書です。美術館に行きたくなります。
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