本書は都市交通を考える際に都市交通戦略の視点が必要であり、それを実現するためにパッケージ・アプローチの手法を提起した本です。
交通による環境負荷を低減し、交通の効率性と妥当で公平な負荷を実現するために、少ない移動でのアクセスを考慮した都市計画や、環境負荷の低い交通手段への移行、自動車利用の削減や交通管理やユニバーサルデザインなどの手法が提起されています。しかしこれらを実現するにはこれらの手段を適切に組み合わせて実施へとつなげなければいけません。これがパッケージ・アプローチで、1)組織や地域など行政の統合、2)交通手段の施策の統合、3)基礎投資と管理運営と経済政策の統合、4)交通計画と土地利用計画の統合の4つの統合(パッケージ)によってなりたちます。
これらパッケージ・アプローチを都市サイド、移動主体の行動、自動車交通、公共交通、歩行者・自転車、交通空間、交通障害者、新しい技術の8つに分類して、適用事例を紹介していきます。3段階の交通抑制地域を設定したオランダのABCポリシー、職住接近都市を目指したシアトルのアーバンビレッジ、脱車生活を進めるイギリスの運動トラベルワイズ、自動車の通過交通を抑制・制御するシンガポールやノルウェーのロードプライシング、トラムによるパークアンドライドを導入したストラスブール、自転車中心のまちづくりをすすめるオランダのハウテン、などなど多彩な取り組みが紹介されており、交通戦略の多様性とその潜在的な可能性に驚かされます。とくに海外の先進事例を詳しく写真や図入りで説明してあるので、具体的にイメージができてとてもわかりやすく、実用的です。
日本ではまだそれほど交通問題は深刻化していませんが、これから地球環境問題や高齢化によって一気に問題化する可能性があります。また、多くの利害関係者が絡む交通問題を解決に導くには、本書で提起されているような全体的な視野で、分野や利害を統合していくような枠組み、パッケージ・アプローチが極めて有効に作用するであろうと思われます。交通問題を解決・解消するにはまず交通戦略をたてること、本書の提起するものは大きいと思います。