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ただ,理想主義に走っている感は否めない.例えば,よいものを書くためには「一切の妥協を排し」自分の主張を貫くことを勧めているが,物を書くことで収入を得ているものであれば編集者や市場の要求に応えたりすることも必要になるだろう.
ともすれば枝葉末節に拘り、その基本を忘れがちな我々に対し人生の先輩として
助言を発する形で本著は構成されており、本質的な向上心を持つ読者にとっては
イマドキ珍しい良薬となり得る著作である。
また自身の芥川賞受賞の経験を元にあげる現象の数々は、非常に具体的なリア
リティと示唆を有しており、文章で身をたてる志を持つ読者にとっては読んでおい
て損のないエッセイでもある。
上記の様な主張を導くための表現として、筆者の批判は出版業界の構造的欠陥
から家元制度や国家の在り方等この国の風土にまで及び、なかなかに痛烈であり、
確かに表現上、過激、偏見と捉えられかねない物言いは散見される。
だがそのような表現に囚われ本著が訴えている本質を見失うこと自体が、まさし
く筆者が批判する「眼力のない読み手」であることを自ら証明してると言えよう。
ジェンダーがどう、既存作家批判がどう、ということは結果論として
筆者が自身の中で価値観を構築しているに過ぎない事であり、
今の世を見渡せば、確かにそういわれて納得せざるを得ない部分も多かったり
するからだ。あくまで結果としてみる限り。
当の筆者自身も読者に対し、批判云々よりも「自分の作品を以って示す」ことを
求めており、表現などの枝葉に拒絶反応を示して唾棄するには惜しい作品といえる。
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