カバーのうら側に、この本の概略(抜粋)が書かれています。
「...失敗はあったはずだがよく思い出せないというもの、そもそも自分の辞書には失敗という語はない
かも知れない...と語るもの、自分の弱点はこの場では語らない、と断言するものなど種種多様である
...」
ここだけ読むと、
「ふり返り」が足りないんじゃないか...、なんと傲慢な...、もっと素直になったらいいんじゃないの...」、
と感じてしまいます。が、
内容を読むと、それぞれの人がそれぞれにしっかりした自分の信念をもって言っていることがわかります。
インタビューに応えた臨床家は22人。
それぞれが行動療法、認知行動療法、現実療法、家族療法、ロジャーズ流、アドラー流、
カップルセラピー、ブリーフセラピーなどの専門家です。
それぞれが「まずい」と語る中には、療法のこまかな『ワザ』の使い方によるものはなく、
「クライアントとどのように向き合って、どんな関係をつくれたか」、
「(クライエントの)ペースを超えて面接が進んでいないか」、
「(クライアントだけでなく)協力者とよい関係がつくれたか」...といったことがほとんどです。
それぞれが失敗と思う面接に共通するものは、このあたりに現れます。
全体を通して共通するものはなにかについては、
「第23章 失敗から学んだいくつかの共通のテーマとその教訓」に しっかりまとめてあります。
あまり、「これが共通するところです」と(私の思い込みで)書き出してしまうと、
カバーのうら側を読んで、私が先入観を持ってしまったのと同じことになってしまいます。
一人ひとりの臨床家と向き合って、自分で感じてみるのが一番です。
第23章には、インタビュワーであるジェフリーがインタビューを通して感じたことが、
このように書かれています。
「 ...最高の腕前といわれる20人もの臨床家から、間接的にセラピーを受ける結果となった 」
さらに間接的にはなりますが、
この本を手にした方も、きっとジェフリーと同じように感じるのではないでしょうか。
とても良い本に出会えました。
それから、もうひとつ。
この本の良いところは、すばらしい翻訳です。
文章を読んで英文が浮かぶほどに原文の意味を損なわないよう忠実に訳していながら、
日本語としても違和感のない文章になるように、注意深く、繊細に翻訳されています。
翻訳者のモーガン亮子さんの感性と力量に感謝です。