これは「犬の擬人化」作品ではない。
事故で犬が人間の姿に見えるようになった青年犬飼と、
彼を一心に慕う軍用犬ぽちとの、ほのぼのした話である。
「調教コメディー」とついてはいるが、PTAが「んまっ!」と
顔をしかめるような内容でないことは確かだ。
絵もかわいらしくてとても魅力的だ。
最初はよくありがちな、犬と人間とのドタバタ
コメディだと思わせておいて、話が進むにつれて
なぜ犬飼にぽちが人間の姿に見えるのか、彼の過去に
何があったのかということが明らかになり、突然
話はシリアスな方向に進んでいく。
よかったと胸をなでおろす結末を迎えながら、人間への
ささやかな皮肉も忘れていない。
人間に仇なすチャタレイの存在は特殊ではない、という
ことをこの作品は言いたかったのかも知れない。
そしてぽちとなる存在もまた、誰にでも有るだろう。
読後にさわやかな清涼感を残す、素敵な1冊だと思う。