この人の本を読むと、プロの仕事師の業はこういうものかと、いつも感心させられる。文庫本の場合は数百円、単行本で千数百円〜数千円だが、支払った金額以上の中身が必ずあるのが橋本師の本だ。
話題は相続税から始まる。相続税・・・悪く言われることが多いが、この税金のそもそもの思想は、親子だからって何の努力もせずにいい目にあうのはだめよ、というところにあるという。相続すべき遺産を残した親は相応の努力をしたはずで、その子供だからって棚ぼたで何の努力もせずに親の努力の成果を手に入れようなんてのはフェアじゃないっていう思想。もちろん、親子関係ではあるのだから、他人が手に入れるよりはお安くしときまっせ!となっている。
そして、財産とは何かと来る(実際の叙述はこういう順番ではないが)。財産とは、それを抵当(カタ)に借金ができるものだ、との定義。たとえば、30年の住宅ローンを組んで我が家をもつ。賃貸で月々十数万円払うのなら、同じくらいの金額を(ローンとして)払って将来自分の財産になる持ち家の方がお得ですよ、と銀行は言う。しかし、本当にお得なのか?自分の財産になるとはどういう意味なのか?と言葉の本来の意味でラジカル(根源的)に考えるを進めるのが橋本流。時は大化改新〜平安時代〜鎌倉、室町〜江戸と古くへ遡り、土地や家を所有することに日本人は殆どこだわって来なかった、不動産の所有という概念は明治以来だったか、戦後以来だったかの数十年〜百年くらいのことという。
たとえば、30年ローンで我が家を所有する。いろいろ担保にとられて成立した30年ローン。それをコツコツ返済していって、返済度合いが大きくなるにつれて家はその分だけ自分のものになっていく(=自分の財産になっていく)。そして財産ができるということはどういうことかというと、その財産を抵当にさらなる借金をできる、ということ。
しかし、橋本師曰く、個人事業主ならば事業拡大のために資本=財産=借金が必要になるが、月々決まったサラリーをもらうサラリーマンにとってさらなる借金が必要なのだろうか?答えは断然否だと僕は思う。
変わり者の橋本先生。地道に自分の頭で考える人のまわりを、浮かれた「時代」は一回り経巡って、変わり者が至極まともに逆転する。そういう地道さの強さをこの本でまた感じてしまった。