魅力的なタイトルにつられて読了しました。著者の菊池 仁氏の貸本屋「一二三堂」での乱読、多読の成果が「戦後大衆小説考」に結実し、今ではあまり顧みられない作家たちが人気を博していた頃の小説群の紹介は貴重です。
高度成長時代の到来とともにいつの間にか貸本屋が無くなりましたが、子供の頃に何回か利用しましたので、そのシステムや店の風景、書棚の作品など懐かしく思い起こしながら読みました。筆者とは少し年代が異なりますので、読書遍歴も違い、受けた影響も異なりますが、貸本屋はまさしく戦後の大衆小説文化を支えていたという説明はその通りでしょう。
柴田錬三郎、五味康祐、村上元三、角田喜久雄、富田常雄、松本清張、井上靖、白川渥など、今でも愛読されている作家もいますが、忘れられている作家も同居しています。章では取り上げられていませんが、江戸川乱歩、横溝正史も人気が高く、山手樹一郎の剣豪小説が持て囃されていたことを考えますと、隔世の感があります。
司馬遼太郎の作品は意外に人気がなく、井上靖も恋愛小説が読まれていたという記述は、同時代をおくった人のみ感ずるイメージでしょう。
菊池 仁氏は、椎名誠、目黒考二らと「本の雑誌」の創刊にたずさわっています。
章だてを参考までに。
第1章 貸本屋一二三堂と昭和三〇年代
第2章 柴田錬三郎 花も実もある絵空事
第3章 五味康祐 剣豪が斬ったのは戦後思想
第4章 村上元三 名もなき庶民の歴史参画
第5章 角田喜久雄 伝奇ロマンへの招待状
第6章 富田常雄 『姿三四郎』だけではない
第7章 松本清張 『かげろう絵図』と『西海道談綺』の違い
第8章 井上靖 ロマンの香り高い恋愛小説
第9章 白川渥 明朗、清潔な学園もの