海の漁師の本はいくつか読んだことがあったが 山の猟師の話は初めてだったので大変興味深く読んだ。(敢えて言うなら 立花隆の「青春漂流」に出てきた鷹匠の話を読んだことがあるくらいだ)
まず 猟師としての細部が面白い。僕自身 猪や鹿を食べることが好きなだけに 読んでいて お腹が減ってきた位である。捕るまでも大変そうだが 捕った後の作業は更に大変そうだ。これは素人ではとても勤まらないと改めて感じた。
次に そもそも柳田國男の本から その世界に入っていたという点に惹かれた。柳田は自分自身が 山中で神隠しになりかけた経験を持ち 山人研究に力を入れた時期がある。本書の著者も おそらくは同じような資質がどこかにあったのではないかと勝手に想像した。著者が猟師になる前に行ったというアジア放浪の話も 無理やりかこつけると 柳田が晩年に唱えた「海上の道」のベクトルの方向にある。もちろん矢印の向きは別だが。
最後に 現代の日本で猟師であることの意義について。この点においては 正直僕に見えてくるものは少なかった。著者は 猟師であることが好きだという 極めて個人的な理由で猟師をやっていると考える。エコロジーの視点は 本書の随所にも出てくるが 本書は エコロジーの思想書でもなければ 実践ガイドでもない。
著者が冒頭で述べている 自然との遊びを 大人になっても続けられているという著者自身の喜びが 本書に流れる「明るさ」なのだと思う。その意味では 夕方 日が暮れても 家に帰らずに遊び続けている子供の姿に重なるものがある。
「遊び続ける子供」とは決して著者を貶めているわけではない。逆だ。「遊び続ける」ことが出来る強さこそが おそらく 著者の身上なのだと思う。そして それは非常に羨ましい。