表題から「この悲劇の主人公かな?」と思っていましたが、本書の書き出しに登場させた周桐君(当時13歳)という一人の犠牲者のことでした。かつての満州国吉林省敦化市で起きた毒ガス事件に遭ったのです。その他、数人の子ともちが遊んでいて被害にあったことが報告されています。個人に目を向けた視点から斬り込むという展開の仕方です。
さて、その元凶「60年前の置きみやげ」毒ガスドラム缶が各地に残されたままであるという深刻な現実問題を指摘しています。
かつて日本国内でも毒ガス研究がなされ、この恐るべき化学兵器が瀬戸内海の島で製造されていたという事実が示されています。この大久野島の工場の様子を「わしらの体はきたなくて見せられません」(Mさんの話)と証言しています。平和教育の教材「おおくのしま」も写真入りで紹介されています。
中国での発掘・回収事業として2000年から2012年にかけて「遺棄化学兵器処理事業」が進行中です。訴訟裁判については疑問点が提示されています。「もう被害者にも加害者にもならない」ことを願わざるをえません。巻末には化学兵器CAREみらい基金の案内が掲げられています。