●「一般的なテーマを説明するために奇妙な些事を取り上げる」(p86)ことをスタイルとするグールドのエッセイは、読む人によってはマンネリに感じるかもしれないし、些事から大きな話に展開するお決まりのパターンは無理なこじつけという印象を与えるかも知れない。
●実際、「ナチュラリストを職業とし、人道主義者を信条とする」(p328)グールドが取り上げるテーマは、「進化に対する一般の人々の」「誤解」(p209)を解くことと、人種差別という「無意識の偏見」(p305)を正すことにかなり偏っている。また、些事から始まるいつものエッセイ導入部は、グールドの「蒐集している」「科学書の古書」(p333)の自慢話がまた出たなと思うときもある。
●それでも、グールドのエッセイがどれも変わらぬ魅力を放ち続けている理由は、忘れがちだが忘れてはいけないテーマを信念強く繰り返し、それが学問的誠実さとペダントリーによって味付けされた変奏曲となって他の誰の作品にも似ない孤高の響きとして読む者に了解されるからであろう。