「ぼくの手のなかにはなにもなくて」「ぼくの手のなかにはなにもかもがある」。一本線で描かれ淡く色づけされた「ぼく」を中心にしたイラストに、太田の哲学を感じさせるシンプルな1行の言葉が、ひとつひとつ丁寧に添えられている。ポストカードで見られる、白い紙面の余白を効果的に生かしたシンメトリカルなイラストと美しい色づかいは、本書でも健在だ。特に海を塗るブルーが印象深い。
「ぼく」は、今いる場所から、自己と他者、世界、希望、痛み、戒めについて、自分自身に向かってユーモラスに優しく語りかけているようだ。太田の作風は決して真新しいものではないが、独特の静かな存在感をもっているのは、この語りかけの力によるものだろう。押しつけがましさがなく、誰もが共感でき、前向きな気持ちになれるのがいい。
せわしい日常を過ごしている人に、ゆっくりと読んでほしい。転機を迎えた友だちにも贈りたい。(五十嵐アキエ)
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