この本はフィクションではあるが、ストーリーは、インドの現実を基にして、展開している。格差社会、暴力、孤児、売春など、絶望的な生活のなかで暮らす主人公が、そのなかで生き抜こうとする過程で、様々なことを学んでいく。それらが、クイズ番組で勝ち抜いていく糧となる。
主人公の経験が、偶然にクイズに出題されたわけではなく、主人公の正義感、まじめさ、絶望に屈しないたくましさが、彼を導く。決して運ではなく、彼の人生観が、彼の人生を救う。
救われない人々の描写もあり、残酷な部分もある。著者はインド人の外交官であり、こと細かな描写が、ストーリー展開を、よりリアル感のあるものに仕立てている。もし、ストーリーに、この描写がなければ、薄っぺらいものになっていたかと思う。
インドの悲しい現実を反映したこの小説に対して、「面白い」というのは不謹慎かと思うが、とにかく引き込まれた。雰囲気は、ドミニク・ラピエールの「歓喜の街カルカッタ」を軽くしたような感じ。ショッキングであり、スリリングであり、最後にはほっとさせられる本書は、自分にとっては、今年ベスト1の小説。お勧めです。