原書出版から50年後の邦訳で、いかにも偕成社の本らしく素晴らしい装幀です。外観と中身がこれほどピッタリの作品も珍しいと思う位の出来だと思います。 表紙は男鹿和雄氏、中身の挿絵は作者の自筆。巻末にはお話の中でとりあげられた動植物の細密画が10ページにわたって掲載されていて図鑑的な役割も果たしています。(松原巌樹 絵 川嶋隆義 解説)
ナチュラリストで科学者だった父、アメリカにおける鷹匠の先駆けとなった二人の兄、そして・・・子供時代に、山で暮らしたくて一度は家出をしてしまう遺伝子の持ち主・・・。こんな背景を持って生まれ育った作家が書くとしたら・・・コレしかないよね〜!!という作品です!(笑)
主人公サムは天涯孤独でも何でもなく、「単なる家出」の一年間のお話なのが特徴で、自然の中で一人奮闘する少年のお話ですが、大きな木の「家」やハヤブサを使っての「猟」、鹿皮を使っての衣類の手作りなどのマニアックなエピソードがいっぱいで面白い。
結末は・・・一人で暮らすことへの微妙な苦しさを感じ始めた少年が少しずつ外の人間との触れ合いを求めていく内、「18歳までは親の責任」という社会の常識が押し寄せてきて終わるという、ハッピーエンドですがほろ苦い結末です。著者のあとがきによれば、出版社に持ち込んだ最初の段階で発行者は「家出を勧める」内容に拒否反応が示したらしいが、「子供に家出をさせるなら、都会より森のほうがまし!」という編集者の言葉に翻意して出版に至ったというエピソードも紹介されたいます。
ちいさな子供の「家出」のほとんどは数時間か一日程度のものとすれば、この本の一年間というのは「あり得ない長さ」で、その現実離れした部分が「夢のお話」と言えるのかな?
誰でも一度は思う「森への家出」・・・それを追体験できるとても有益な本と言えますね。(笑)
大人の私だって憧れる森の生活はとても楽しく読めました。