主人公を子供に設定した小作品6編
作者の有''玉青は、私は初めて読む作者なのですが、有''佐和子の
息子さんらしく、母との生活を綴った作品「身がわり」で文学賞を
とっています。
この本の中で扱っている6編とも子供の視線でかかれたもので
イン・ザ・ベイスメント:ちょっと気になる男の子の家の地下室
(ベイスメント)に行きそれから大きく意識が変わる様を描いた作品
悪い友だち:あまりにも正しく好きになれない優等生と、クラスで
唯一反逆している友人との間で心の動く様を描いた作品
一心同体:きれいすぎて近寄りがたかった友人と少しずつ
本音で語り合う中になってゆく様を描いた作品
(ト音記号)シュルッセル:変声期前の音楽嫌いの男の子が
練習の結果、きれいなソプラノの声を披露する話、そして
その成果が、声変わりにより汚れていくと感じた様を綴った作品
ママンの恋人:きれいな母、それに対して汚い父と感じる思春期の
女の子のわたしが、母が亡くなることにより汚いと思っていた
父の母への深い愛情、そして特別な「おじさん」への失望を描いた作品
ぼくたちはきっとすごい大人になる:存在感のうすい友人の死に
よって、生きる意味というのを認識し、正月の初日の出の際の
風景からこれまでの「大人」とぼくたちが考える「大人」の
考えを綴った作品
母や友人の死、不良、障碍者と重たい課題を扱いながら
軽妙に話しが展開してゆく様は、筆力のすばらしさを感じます。
また、このような大きな課題を小学生が突きつけられたときの
反応をうまく表現できているなぁと思うことしきりです。
小学生高学年を主人公にすえているので、読みやすいのですが
決して、薄っぺらではなく、読んだ後に考えさせられる小作品
6編です。また、どの作品も子供ならではの前向きで、素直な
雰囲気を漂わせているため、読後感も気持ちがいいものがあります。
明るくも本質的な内容を扱っているこの作品群は、ライトノベルのような
娯楽性にはさすがに欠けますが、現在の作品らしいアプローチと
そして、子供が本来持っているであろう優しさを感じられる
よい短編ではないかと感じました。 おすすめです。