短歌というものに馴染みのない自分である。しかし、「文 堺雅人」という本で、堺雅人の文章と人柄には興味を抱いた。アノ、何を考えているのかわからない黒目がちの埴輪目!その奥の頭の中で、この人は、こんな風にモノを見、分析し、表現するのか。冷静で細心の心遣いで研がれた米のように無駄の少ない文章。これが、年若い役者さんの書いたものとは。そんな驚きと清新さを覚えた彼のことばに触れられえるなら・・・と、ほぼミズテンで購入。
堺雅人のかつての恩師であり歌人でもある伊藤一彦氏の人間的で適切なナビゲーション、そして教え子堺の打てば響く独自の鑑賞。ふたりの対談形式で、宮崎・早稲田大学出身という共通項を持つ若山牧水という歌人が教科書の写真や数行のプロフィールをビリビリと破り出てきたかのように、人物像が立ち上がり共感を持って感じられる。演劇というものに引き付けた堺の解釈も魅力的。
私がとりわけ気に入った歌は
・われとわが悩める魂の黒髪を撫づるとごとくに酒を飲むなり
・さうだ、あんまり自分のことばかり考えていた、四辺(あたり)は洞のやうに暗い
・なにゆゑに旅に出づるや、なにゆゑに旅に出づるや、何故に旅に
など。ダメダメな無頼派が、ここにもいたのか、と共感とともに面白く読んだ。