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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
より深く賢治を知れる、人の慾や宿業を描いた厳選童話集,
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レビュー対象商品: ほんとうは怖い賢治童話 (オフサイド・ブックス) (単行本(ソフトカバー))
人の強欲・悪意・他者を殺しうる性質・拭い切れない宿業等をかつてキリスト教に興味を持ち、その後、国柱会に属し日蓮の教えの布教に努めた賢治が童話という形に一見分りやすく読みやすくしかし果てし無き深遠さを持って表現した作品の厳選集です。
本書を読む事で「銀河鉄道の夜」「雨ニモマケズ」「永訣の朝」「よだかの星」等の代表作だけでは気付けない知りえない賢治の懐の深さや怖い童話作品として表出された彼の心の葛藤を知る事が出来る素晴らしいアンソロジー(選書)です。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ほんとうはシュールな賢治童話,
By 湯掻坊 (神奈川県大和市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ほんとうは怖い賢治童話 (オフサイド・ブックス) (単行本(ソフトカバー))
赤い手の長い蜘蛛と、銀色のなめくじと、顔を洗ったことのない狸が、いっしょに洞熊学校に入りました。――『洞熊学校を卒業した三人』
あるとき、三十疋のあまがえるが、一緒に面白く仕事をやって居りました。――『カイロ団長』 軽便鉄道の停車場のちかくに、猫の第六事務所がありました。――『猫の事務所』 「煙山にエレッキのやなぎの木があるよ。」――『鳥をとるやなぎ』 四つのつめたい谷川が、カラコン山の氷河から出て、ごうごう白い泡をはいて、プハラの国にはいるのでした。――『毒もみのすきな署長さん』 本書に収録されたいくつかの短編の冒頭文です。なんともシュールな味わいの出だしではありませんか。そして、読み始めたとたんに、だんだん時空がずれていくような、しかしほっこりとあたたかい不思議な感覚がおそってきます。 荒唐無稽、奇想天外、非現実で独特なユーモアに満ちた、ちょっとブラックな物語世界が展開していき、えっ? これがあの禁欲的で犠牲的精神を説いた『雨ニモマケズ』の、リリカルで感傷的な『銀河鉄道の夜』の宮澤賢治? と、私の中の賢治像がぐたぐたに崩れていきます。 「ああおもしろいなまねこなまねこ」――「山上大明神さまの念猫」(『洞熊学校を卒業した三人』から)
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
地獄の沙汰は、……,
By 燈台守の卵 "人生の厄介息子" (<受難>を冠した県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ほんとうは怖い賢治童話 (オフサイド・ブックス) (単行本(ソフトカバー))
本書の編者・富永虔一郎氏は「はじめに」に書いている。「本は、読んでおもしろいのがいちばんです」、と。太宰も書いている。「こはいことなんかない。面白くない小説は、きつぱり拒否したはうがいいのです」(「「晩年」に就いて」)。
本書収録の「洞熊学校を卒業した三人」と、本書には収録されていない「蜘蛛となめくじと狸」とは非常によく似ている。似ているけれども、違う。本書巻末「■宮沢賢治 略年譜」によれば、「蜘蛛となめくじと狸」を改作したものが「洞熊学校を卒業した三人」である、という。 改作の時期がいつごろであったのか、略年譜には記されていない。〈学校〉をタイトルにも入れるくらいだから、あるいは、賢治が教諭となって以降か? と想像してみたが……。 両者の間にある相違点はいろいろある。それをいちいち、一から十まで紹介することは省き、二点だけ紹介する。 一点目は、〈眼の碧い蜂〉が平和・幸福・明るさ、といったプラスの雰囲気を演出していること。作中の大半を占める、泥臭さ・血なまぐささといった、マイナスのイメージと対をなしている。 二点目は、――「蜘蛛となめくじと狸」では、「なるほどそうしてみると三人とも地獄行きのマラソン競争をしていたのです」の一文で作品が閉じられているが、「洞熊学校を卒業した三人」では、そんな一文はどこにも見あたらないことだ。〈小説修業〉を〈大マラソン〉としてとらえていた太宰もまた、あるいは、〈地獄行きのマラソン競争〉を意識していたろうか? なんて考えは、置いといて……。 地獄の沙汰も先生しだい、あるいは、地獄の沙汰も学校しだい、という、これは教訓話であろうか? 「■宮沢賢治 略年譜」によれば、賢治は「中学時代にキリスト教に対する関心を深めた」のだという。あるいは賢治は、弟子は先生にはかなわない、だから、いい先生をえらべ、という聖句を意識していたかもしれない。 井上ひさし氏は、『ちくま日本文学 003宮沢賢治』巻末「賢治の祈り」のなかで、 作品とその作家とを大いにごっちゃにし、それからあらためて作品へ立ち返ると、いっそうその滋味がますという作家もいて、その代表格の一人が疑いもなく宮沢賢治である。 と書いている。井上氏のすすめにしたがって、本書収録「カイロ団長」を眺めてみる。『ちくま日本文学 003宮沢賢治』巻末「年譜」(宮沢清六氏編)によれば賢治は、「花巻温泉の街路樹、花巻病院などの花壇を設計造園した」り、「花巻温泉に南斜花壇(別名「つるくさ花壇」)を設計し造園した」りしている。ところで「カイロ団長」には、こうある。 あるとき、三十疋のあまがえるが、一緒に面白く仕事をやって居りました。/これは主に虫仲間からたのまれて、紫蘇の実やけしの実をひろって来て花ばたけをこしらえたり、かたちのいい石や苔を集めて来て立派なお庭をつくったりする職業でした。 どうやら賢治の実体験が作品として昇華されてあるのらしい、と察せられる。 「■宮沢賢治 略年譜」には、賢治は「「石こ賢さん」と呼ばれ」るほど、「鉱物標本の採集に熱中」していたことや、「鼻炎で入院した病院の看護婦に恋したと言われ」ていることなど、トリビア的情報も盛り込まれており、人間・賢治の「おもしろ」さを伝えよう、という編者の心づくしが伝わってくる。 ちなみに、本書収録作品中、もっとも私の気に入ったものは、「祭りの晩」だ。亮二少年が、山男に対して抱いた〈かあいそう〉という感情のまっすぐさが胸を打った。〈かあい〉は、〈可愛〉。愛すべし。 ※「蜘蛛となめくじと狸」本文引用は『ちくま日本文学 003宮沢賢治』、「「晩年」に就いて」本文引用は筑摩版『太宰治全集第十巻』による。
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