日本における歌謡曲を考えるうえで,さまざまな時期の学校教育において,子どもたちがどのような歌を教えられてきたかというのは,1つの重要な要素である。本CDでは,明治期から敗戦にかけてのそれを概観でき,資料的な価値は非常に高い。各曲は楽譜校訂を経て,作詞者・作曲者・編曲者などの意図を最も反映する楽譜に基づいて,演奏されている。そのおかげもあってか,昭和12年版の「海ゆかば」はきわめて荘厳かつ,悔しいけど感動的で,当時の日本国民を戦争に駆り立てただけのことはあると思わされるのであった。こうして大本営発表のテーマ音楽である「海ゆかば」は,軍や政府の情報操作と,多くの人々が避けえた犠牲をもたらしたのである。こういったことをまざまざと考えさせられるのは,原曲のみならず,歌やピアノの演奏がすばらしいからであろう。