砲弾につかまって、トルコ軍の要塞に着弾するシーンは、ミニチュアとの連携が上手く、エカテリーナ二世の宮廷晩餐会では、廷臣たちの滑稽さや、艶かしい女帝の下着姿や部屋のカラクリが面白く、ハーレムでのスルタンや宦官たちの振る舞いは、可笑しく、本編に登場する衣装、美術、セット、どれも豪華で素晴らしいものがあります。まるで、カラフルなアイシングのかかったデコレーションケーキを眺めているかのようでした。また、ヴェネチアのカーニバル、月世界など縦横無尽に駆け巡る冒険譚は、一連のシーンをそれぞれ簡潔にまとめているので、目まぐるしさがさほど感じられないのも良かったと思います。荒唐無稽とも思えるミュンヒハウゼン男爵の破天荒な物語は、テリー・ギリアム監督の『バロン』にもありますが、ギリアム版は、より幻想的に描かれる一方で、世間から忘れさられようとするヒーローの「老い」に哀感漂うムードが特徴でした。しかし、本編では、不老不死の主人公は、中年のプレイボーイといった感じで、一見悩みなんかありそうもない感じがしますが、冒頭の伏線とラストのオチに、哲学的なテーマが隠されていたり、単なる娯楽作品に終わらないのも良かったと思います。ギリアム版と違った展開もあるので、両方を見比べてみるのも面白いかと思います。