短いものだと数行、1ページ、2ページのものが大半で、ぼくらがイメージするいわゆる短篇小説が数篇・・・合計51篇収録されている。物語らしい物語はほとんどない。哲学というのか禅問答というのか、見た目はシンプルなんだけれど、すごく複雑な知恵の輪みたいな文章である。読んでいて、途中で「あれ」と首をかしげる。それは「騙し絵」を見ていて、そこに隠されているものの気配に感づくのに似ている。頭の中で整理して、短い文章なのでもう一度始めから読む。今度は逆に最初の絵がなんだったか見えなくなってしまう。自分の中で確立していた心の有り様だとか、人生だとか、世界だとかが、呆気なく崩壊して、不明なものに再構築されるのだ。好むと好まざるとにかかわらず。