ノワール小説シリーズの第一作。
一読しての感想だが、表現力はかなり高いと思う。
テンポよく読めるし、拷問などのシーンは不快感を覚えるほどの描写力だと感じた。
とすれば、この全体的なわかりづらさは演出の問題だろう。
この作品で序盤から残虐の限りを尽くしている一団は、裏表紙のあらすじによれば「歴史の狭間で暗殺を請け負ってきた極秘組織『会』」であるとのことだが、そのことが本文中で明示されていた記憶がない。視点転換が多く、シーンが断片的になってしまうため、読者が情報を咀嚼しきれなくなっているのではないか(もちろん私の読解力に起因するものかもしれない)。
また、クライマックスの戦闘シーンも状況が把握しづらかった。主としてこのシーンで視点が置かれるのは高塚という少年だが、彼は自分にふりかかっている災難がどういうものなのかを理解していないから、相手の動きを素早く推察するなどということはできない。そのうえ入り組んでいて暗い夜の学校という舞台設定がのしかかる。
せめて学校の見取り図でも添えてくれれば、どれくらい追い詰められた状況にあるのかもう少し理解しやすかったのだが。
さらには第一作ということで、そもそも読者に与えられる情報は著しく制限されている。後々詳しく語られる、ということなのだろうが、テンポよく読めすぎるせいもあって、何があったのかよくわからないまま終わってしまったな、というモヤモヤ感が残る読後だった。
このように、先に続くことを前提として読者に対して情報を隠すタイプの第一巻に対しては、どれだけ「続編での展開に期待できる」と思えるかが問題になる。
しかし、私はこの作者の作品を読むのは初めてで、上に述べたように第一印象はあまりよろしくない。来月第二巻が発売されるようだが、買って読もうかという気分には今のところなっていない。
他にレビューされている御二方は、それぞれ「作者と会ったことがある」「作者の大ファン」とのことで、「続きに期待できる」と思える十分な根拠をお持ちなのだろうと思う。
正直羨ましいのだが、事前情報無く読んだ者の感想も必要だろうと思いレビューを投稿した次第。
今この本を買おうか悩んでいる人には、2巻が発売されてから買うことをおすすめしたい。
もしモヤモヤとした読後感を感じてしまった場合、すぐに続きを読む(モヤモヤを解消できるかもしれない)ことができた方が幸せだと思うからだ。