直木賞を受賞した、という安易な理由で読みました。作者にも作品にも最初から先入観がなく、また、ここが重要ですが、私が女性読者であるためか、表題の「ほかならぬ人へ」の作品の良さがそこまで理解できませんでした。
名家に生まれた落ちこぼれである主人公の男性のイメージは、線が細く優柔不断で、そのくせ男性のプライドをこっそりと秘めている人。その男性が、周りに現れるそれぞれの魅力を持った女性たちのあいだで揺れ動く。
かなり男性目線の物語運びだと思います。男性の感傷がこんなものだとは言い切れないし、私の勝手な偏見ですが…。複数の女性から好かれ、選ぶ側にまわる男性の設定は、ゲームでも、男性用の小説でも、よくあるものだと思います。
筆運びが繊細なので上質な物語になっているのですが、筋は、「育ちがよろしくなく、幼稚な美人か、仕事も料理もできて、スタイルも抜群、でもブサイク、さて、どちらの女性をとる?」と巷でよく交わされる究極のニ拓を要は物語にしているだけのようにも思います。女性を理想化し、やさしいものに昇華しすぎているようにも、感じました。
女性側からこのほかならぬ人への世界を見てみたいものです。