正直驚いた。凄っごく面白い。娯楽作ではなく、ブラックユーモアや過激な笑いの要素を含んだ小劇場テイストの映画(ふと、『バートン・フィンク』を思い出した。あそこまで狂気じみてないけど)。この映画の監督、その後『殺人の追憶』のメガホンをとったそうで、なるほどなと唸らせられる。韓流だの何だのといった枠組みを軽く飛び越えてしまっている。
DVDパッケージからペ・ドゥナが主人公であるかのような印象を抱いていたが、むしろ本当の主人公はイ・ソンジェ演じる大学講師。人生がうまくまわっていかない男の苛立ちが、キャンキャンうるさい近所の犬を始末しようとする、という行為によって表現されている。ペ・ドゥナは逆に、失踪した犬を助け出そうとする、という行為によって、うだつのあがらない人生を抜け出そうとする女のコを演じている。
この映画、日本の映画だと言われたら日本の映画だと思うんじゃないかなぁ(もちろんセリフは全て韓国語だけど)。アメリカの映画、ヨーロッパの映画、と言われたら、そう思うかもしれない(登場人物は全て韓国人だけど)。この作品は人にとって普遍的な何かを表現するのに成功しているような気がする。
ポン・ジュノ監督の映画から感じるのは、彼が「自らの身を置く社会をシッカリ見ている」ということ。そういう意味で、彼の映画の題材は常に「韓国社会」そのもの。ところが、社会というものは多かれ少なかれ似たような矛盾を抱え込んで成立しているものだから、「韓国社会」を描いた彼の映画は、韓国以外のどんな社会に住んでいる人にも訴えかける普遍性をもっている。
オリジナルタイトルは何と『フランダースの犬』。タイトルに深い意味はないそうだが、犬を殺すという話なので動物に特別の愛情を注いでいる人は観ない方がいいかもしれない(残酷・残虐シーンがあるわけではないが)。