私はどんな釣りであれ、そこには「こだわり」、「粋」みたいなものが、実際の釣果以上に「楽しみの源」になるのではないかと考えている。
ところがこの著者は、そこそこの著名人・教養人でありながら、ご本人も「こだわりがない」と認めてはばからない。
もちろん、釣りは極めて個人的な趣味なので、私はこの著者をはじめ、「こだわらない釣り人」にイチャモンをつけるつもりはまったくない。
しかし、どうも読んでいても「ワクワク感」がない。そしてその原因こそが、この「こだわりのなさ」にあると気づく。
まず、身なりが汚い。いやいや、これも釣果には関係ないのだから、「釣りにオシャレが必要」だとは言わないが、しかし紙面に登場する著者の写真の身なりは、とにかく酷すぎる。「身なりに関心がない」のを通り越して、とにかく「バッチイ」のである。この本を1つの形容詞で表現するとすると、まさにこの「バッチイ」以上のものはないであろう。
そしてこの印象は、この本全体に確実に漂うのである。「コンビニで朝食」とか「クルマの中で寝た」とか、もちろん私がイチャモンをつける筋合いはまったくないのだが、とにかく行動も粋のカケラもなく、ただただ印象としてすべてが「バッチイ」のである。
文中のコラムにも著者の釣り道具の写真や考え方が登場するが、道具箱もぐちゃぐちゃで、私としては信じられない。エサにもこだわる素振りすら見せず、とにかくこだわりがない。私はしかし、「釣果に関係あるのかないのか分からない、独自のエサへのこだわり」みたいなことが釣りの愉しさだと思っているので、とにかく釣果だけにこだわり、どこでもフラシを使い、紙面に出てくる著者のお写真や文体を拝見しても、「サカナを釣ることだけに意味がある」としか思えない。
その文体も、「粋」にはほど遠い。もちろん、月刊誌の連載なので、文章の香りとかなんとか、そんなものは必要ないのかも知れないが(しかしそういうエッセイを書く釣り好きな文人も多い)、とにかく読んでいてもワクワク、スッキリ感などなくて、ただただバッチイだけ。
それでも敢えてこの本の良さを見つけるとすれば、釣り場の情報が具体的で、確実に再現できること、そして「こういう釣り人がいると思えば、自分の釣りのスタイルがいかに楽しいか再確認した」ということであろう。後者は著者に失礼なことは重々分かっているが、しかしそう思わずにはおれないほど、バッチイ本であった。
最後に注意。本書のタイトルは「へらぶな釣り場50選」であり、しかも「50選」がでかでかと載っている。私はここアマゾンで「50の釣り場の情報が得られるのだろう」と単純に考えたが(そしてこの表紙であれば、それは無理からぬことだろう?)実際は、語られている釣り場の数は50どころか、20くらいではないのか?どういう意図か分からないが、これでは「詐欺だ」とさえ言われてしまっても、仕方ないと思う。