へうげもの11服は秀次切腹・伏見大地震・サンフェリペ号事件などを間に挟みながら、
”秀吉後”を見据え蠢く野心家達と相変わらずな数奇者達の交錯する時代が描かれる。
表紙はワインレッド、織部&佐太郎の数奇者師弟コンビの表情は見物。
巻末では、細川護煕氏が明らかにしたヤング古田左介の嘘みたいな活躍の記録を紹介。
まずは歴史的事件よりも織部の美学が一定の完成を見たことに着目してほしい。
”乙”美学を織部自らが語ることにより織部は利休の域に大きく近づいた。
蒔絵箱の再発見から織部焼の緑釉に繋がると思われ、美学のさらなる発展も予感される。
織部の美学に併せ発露する家康・三成・清正らの業と野望。
何より老いても信長の野望を背負い慶長の役へ向かう秀吉のロマンチシズムは哀しい。
また酒器(徳利)開発に見られる文化発展や様々な人物が語る経済戦略の重要性。
だが難しい言葉で語られるほどギャグからは遠くなっていく。
戦国ギャグと銘打ちながら、この単行本はギャグ3流・戦略性2流・ロマン1流なのである。
顔芸以外で織部がギャグをしにくい分だけ脇役たちは躍動している。
馬鹿数奇者コンビ再結成の細川忠興を筆頭に福島正則や利家&右近コンビ、
そして荒木又兵衛や頭角をあらわしてきた小堀作介は次巻以降への期待が高まる。
さらに気になる人物が二人。
朝鮮半島に明・西欧諸国に比肩する商業国家樹立の夢を吐露する小西行長。
壮大な構想に漂う悪漢の香り、彼もまた骨太な業を背負う者だった。
これによりスケールが格段にアップした関ヶ原の戦いに期待したい。
もう一人は伊達政宗の好敵手にして秋田繁栄の礎を築いた佐竹義宣。
強面で鳴らす将来有望な暴力団幹部なのに部下とキャッキャウフフするのが願望とか、
そんな感じの、おおよそ戦国漫画にあるまじきセンスの持ち主なり。