いや、よく続いたものです。よほどの京都への愛着と造詣、そして編集者の協力がなければ決して完結しなかった作業でしょう。最後は春そして桜ということで納得はいくのですが、むしろ冬や夏の作品の方が、著者の語りが生き生きとしていたというのは皮肉な現象です。おそらく、これからも長く読み続けられるシリーズとして残ってほしいものです。
「はじめに」は、慣れてきたのでしょうか見事なできばえです。第一章もなかなかの力作です。第5章は、ちょっとディテールに懲りすぎたようです。本シリーズの隠れた売りでもあった近江の部分も、今回は、前作での取り上げ方にだいぶ批判があったのでしょうか、だいぶ抑えた筆致になっています。第6章では、天の橋立まで取り上げられているほどです。
全シリーズを通して痛感したのは、著者の京都に対する深い愛情と同時に現在の京都、特に食の状況に対する深い絶望感です。そしてそれを食い散らかしていくメディアと観光客への強い批判です。著者のこれからは失われてしまった京都の幻影を近江や丹後に求めていく作業に費やされていくのでしょうか。