学校という場は、行き慣れてしまった子どもには、ある意味どうってことない
日常になってしまって、毎日毎日新鮮な体験をするところではなくなってしまう。
そんな“ふつうの男の子”が、またとない、初めての経験をした日のことが、
喜びと驚きをもって描かれている。
新しく赴任してきたギー先生の授業のやり方ったら……。
子どもの内面を子ども自身で探らせ、表現させる試み。
一切の前置きなしに始まった授業は、音楽を聴くことから。
こころに広がるイメージを具に描いてごらんという内容だ。
“ふつうの男の子”は、ギー先生のことばに触発されて、溢れ出すイメージのままに
綴り始めるのだ。
「まるで、頭のなかでダムがこわれて、ことばが洪水になってでてくるみたいで……。」
という、自分でもどうしようもないおもしろさにひと時のめりこむ。
なんと新鮮な、豊かな体験だろう。
ちょっとシュタイナー教育の一部分を思い出したが、ギー先生が子どもの内面と
まず向き合おうとしているのがわかる。いい先生だ。
自分のやり方をまっすぐにぶつけて、跳ね返ってくる子どものこころを
受け取ろうとしているのだから。
朝起きてからのシーンはずっとセピアがかったモノクロだったのが、
衝撃的な登場をするギー先生のシーンから、じょじょに絵に色が加わっていく。
“ふつうの男の子”のこころがぐんぐん動いて、広がっていくさまがみごとに
描かれていて引きこまれる。
男の子が、この日のわくわく感を大事に胸に抱いているのが
よくわかるラストシーンはほほえましい。