この漫画は、従来の歌舞伎漫画の抱えていた大きな欠点、登場人物の何人か、あるいは非常にしばしば主役が、浮世離れした天才であるという設定をとっていません。
考えればわかることですが、歌舞伎は名俳優の子供がやはり役者になることを繰り返している芸能です。天才スポーツ選手の二世の成功確率が50%を大きく切っているのに比べて、天才歌舞伎俳優の二世の成功確率は余りに高い。つまり、歌舞伎とは本来、天分ではなく、環境や努力で到達できる可能性が極めて高い職業であるということです。
その本質をしっかりとらえて、この漫画では、主人公の天分は、家柄とルックスだけ!(もちろん、歌舞伎にとって向いているルックスと、芸能人に向いているルックスとは異なるのですが、その辺は細かく突っ込んでいませんが、少女漫画なので突っ込まなくて良いです。)
環境と外見などの運は恵まれているが、極めて普通の少年である主人公が、努力で少しずつ芸をきわめて行く姿が、大変共感がもてます。
一所懸命になるきっかけが女の子に好かれたいという通俗な理由であることも、シリアスにならずに明るく楽しく話が進んでいく点も、漫画として正解だと思います。
この巻では、今まで余りに浮世離れした良い子であったヒロインあやめが、普通の女の子としての気持ちも出してきたこと。
さらに、一弥を慕うお嬢さんも、単なる悪役ではなく、心の底からは自分を愛していない男を手に入れられそうになった瞬間わずかに心が揺れ始めるという、人間らしい人物になってきていて、今後が楽しみな展開になってきました。